2026.08.06

福島銘菓「玉羊羹」に刻まれた戦争の記憶 誕生から90年、不戦への思いを伝える



福島県を代表する銘菓として親しまれている「玉羊羹(たまようかん)」。

風船のようなゴム膜に包まれ、つまようじで刺すとみずみずしい羊羹が現れる独特の菓子だ。実はこの玉羊羹には、戦争の時代に生まれた歴史と、不戦への思いが込められている。





玉羊羹を製造するのは、二本松市の老舗菓子店「玉嶋屋」。江戸時代創業の同店で玉羊羹が誕生したのは1937年(昭和12年)だった。県や軍から「戦地へ赴く兵隊に、できたての羊羹を味わってもらいたい」との要望を受け、当時の店主・和田又吉さんが開発したという。

開発当初の商品名は「日の丸羊羹」。持ち運びやすく、できたての味を楽しめることから人気を集めた。しかし、その後の太平洋戦争開戦により状況は一変する。砂糖などの原材料の確保が困難となり、玉嶋屋は菓子づくりを断念。江戸時代から続いてきた店の歴史も、一時途絶えることとなった。




終戦後も材料不足が続き、すぐに営業を再開することはできなかった。だが、廃業からおよそ10年後、原材料の統制解除などを受けて羊羹づくりを再開。かつての日の丸羊羹を懐かしむ声にも後押しされ、名称を「玉羊羹」に改めて販売を始めた。すると商品は大ヒットし、福島を代表する銘菓へと成長した。

現在の玉嶋屋では、終戦の日が近づく毎年8月になると、復刻した「日の丸羊羹」を販売している。






4代目の和田雅孝社長は「戦争は悲惨なもの。二度と起こしてはいけないという不戦の誓いの意味も込めている」と話す。また和田社長は「お菓子には人を癒やし、団らんをつくる役目がある」と語る。

兵士たちの心を慰めるために生まれた玉羊羹は、時代を超えた今もなお、人々を和ませる存在として愛され続けている。戦争によって途絶えかけた伝統と、その歴史を乗り越えて受け継がれてきた味。玉羊羹は福島の銘菓であると同時に、「二度と戦争を繰り返してはならない」という静かなメッセージを今に伝えている。
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